予防歯科

昔ながらの歯科治療は、虫歯になったら削って詰める、痛くなったら神経を取る、根っこがダメになったら抜くといった、後始末処置が主体でした。
その結果、頑張って歯医者に治療に通った人ほど年齢とともに健全な歯がなくなり、高齢者の多くが入れ歯を受け入れざるを得ない状況になっています。
当院の予防歯科は複数ある診療メニューの一つではなく、全ての診療においてベースにある信念です。

<歯を一生涯大切に使うためのプログラム>

虫歯や歯周病の本当の原因は、生活習慣と食習慣にあります。
また、各個人の年齢や免疫力にも大きく左右されます。
過去の歯科治療そのものが歯科疾患の原因になります。
無計画な治療を繰り返すことで歯を失うリスクがあがります。
各個人によって病気の傾向、社会生活の現状と現実、健康に対する考え方が異なるので、予防方法は各個人に合わせた方法を確立しなければなりません。理想論ばかりでなく、年齢ステージも考慮し、結果に結びつく予防法を実践する必要があります。

当院では、各種口腔内検査等により、歯質の状態、歯周病・虫歯のリスクデータを取得し、必要に応じて(患者様の目的と考え方に合わせて)治療を行い、治療後の口腔内環境を維持継続するための予防プログラム(定期的メンテナンス)を提供します。PMTC(専門の機器を用いたクリーニング)やTBI(ブラッシング指導)、食事指導、栄養指導、生活習慣指導を併用した予防プログラムを実践しております。また、小児の歯並び予防のための口腔機能発達トレーニングを行っています。

0歳~6ヶ月

この時期の母乳育児は口腔機能発達の第一歩です。赤ちゃんはおっぱいをしっかり深く加えて舌を上下させ、母乳を吸引する「吸啜」という原始反射動作を行います。ここを疎かにして、安易に哺乳瓶やストローマグなどで代用してしまうと、お母さんの栄養や免疫をもらえないだけではなく、正しい舌の使い方や鼻呼吸が身につかないため、口腔機能発達不全となり、口呼吸や異常嚥下により顎の骨の成長が遅れ、将来の歯並びに影響していきます。吸啜がうまくできない原因には鼻炎、舌小帯付着異常、上唇小帯付着異常などがあります。

6ヶ月〜3歳

食習慣や歯ブラシの習慣をしっかり身につけることで、後々の口腔内管理が容易になります。できるかどうかよりも、少しずつ身につけていくことが大切です。食事(間食を含む)は時間を決め、毎食時の後は歯ブラシを持たせると良いでしょう。口腔内管理を習慣化することを心がけましょう。

3歳~6歳

乳歯が全て生え揃う3歳の時点で、食事や歯みがきに対する生活のあり方がどのように習慣付けられているかが問われます。特に親の考える生活教育のあり方がそのまま反映されますので、この時期の子供には、食事の後に歯を磨く習慣をしっかりと身につけさせることが大切です。また、かかりつけの歯科医医院との良い関係を持つことも、その後の口腔内環境を良くすることにつながります。不正歯列、不正咬合にも注意して検診を受けてください。お口ポカンやイビキなどが見られる場合は要注意です。口腔機能発達不全を放置してしまうと、歯並びが悪くなるだけではなく、中耳炎、副鼻腔炎、アデノイド肥大などの耳鼻科疾患や睡眠障害により発達障害なども引き起こす可能性があります。

6歳~12歳

親の目が少しずつ子供から離れていく最初の時期であるため、生活習慣の一部は子供自身に委ねられていきます。この時期は、永久歯の生え変わりが始まる時期であり、まだ永久歯が幼若であるため、虫歯にとてもなりやすい時期でもあります。虫歯のリスク検査を受け、予防対策をしっかり立てましょう。

不正歯列、不正咬合に対しても注意する時期であり、矯正検診をお勧めします。早めに口腔機能発達不全を改善することで、顎の骨を正しい方向に発育させ、本格的な矯正治療をせずに健康的な歯並びを獲得することも可能です。この時期に、親と子供が、口腔内の健康や、歯みがきの大切さを理解し、歯科医院との適切な関係を築くことによって、将来的な口腔内環境の安定を得ることにつながります。

また、学童期から思春期にかけては成長スパートの期間です。心身ともに健康であるためには運動と食のバランス、そして栄養管理が非常に重要です。

13歳~18歳

子供の自立性が芽生え、更に親の目が行き届かなくなる時期であり、大人になったときの状態がある程度予測できる時期となります。ある意味ここが大きな分岐点と言えるでしょう。

この時期に生活環境や口腔内環境が良好であれば、その後の口腔内管理は習慣付けられていくことによって容易になります。永久歯が未発達であるため特に虫歯に注意してください。虫歯菌のリスク検査を受け、しっかりと予防対策を立てましょう。もしもこの時期に適切な環境が得られなければ、将来的に歯を失うリスクを上げることになります。この時期の安易な歯科治療が、将来大人になってからの再治療の悪循環のスタートになります。

また、この時期からの矯正治療は顎の骨の発育がほぼ終わってしまっているため、口腔機能訓練による、歯並びの改善はあまり期待出来ません。抜歯を含めた本格的な矯正治療が必要になってきます。

18歳~25歳

永久歯の石灰化はほぼ終了し、親知らずの萌出の影響を受け始める時期となります。噛み合せを含めた、各個人の特性が決まる時期です。この時期の口腔内環境はそれまでの生活環境や意識レベルが反映され、一つの完成を表します。もしこの時期に不幸にも虫歯になってしまったら、原因をきちんと突き止め、再治療のリスクを減らすために、できる限り質の高い材料で治療することが大切です。

つまり、各個人の方向性が見えてくる時期でもあるので、将来的なリスクに対して予測が立て易く、対処し易い最後の時期となります。

25歳~35歳

それまでの生活環境や意識レベルがある程度出来上がっているため、口腔内環境の大切さについてそれぞれの見解の違いがはっきりする時期となります。

各個人の価値観で、歯科医院との関係性が決まるとも言えます。この時期に悪因子(歯列不正、銀歯や不適切な充填物など)を残しておくことはできるだけ避けたほうがいいでしょう。また、予防対策を立てず神経を取るなどの不可逆的処置を繰り返していると、10年、20年後に歯を失う確率は一気に上昇してしまいます。社会人として仕事で忙しくなる時期でもあり、健康の自己管理が疎かになり始める傾向があると言えるでしょう。

また、妊娠中はホルモンバランスの変動や食生活の変化で歯周病や虫歯にもなりやすい時期です。お母さんの栄養状態はおなかの赤ちゃんの身体の形成にも大きな影響を与えます。妊娠初期の段階で既に乳歯の歯胚(歯の原型となるもの)作りが始まりますので、お母さんの口腔衛生管理、栄養管理がとても大切です。

後々のためにも、歯科医院と良い関係を築き、定期的なメンテナンスを行い、将来的なリスクを軽減できる計画的な管理をお勧めします。

35歳~50歳

口腔内の将来像が見えてきます。虫歯に対する配慮も大切ですが、歯周病や噛み合わせに注意を払ってください。定期的なクリニックでのメンテナンスは必須です。将来歯を失いたくなければ、遅くてもこの時期までにしっかり考えることをお勧めします。

この時点で虫歯がなければ、生活習慣(食習慣や歯磨きの内容など)に大きな変化がないかぎり、それほど虫歯に対する心配はしなくていいでしょう。もし虫歯が存在する場合は、早急に治療し、日常の生活習慣を改善することを提案します。

噛み合せの問題はこの期間内までに対処したほうが良いでしょう。放置してしまうと、後々の対処が困難になる場合があるからです。また、歯周病による影響が少しずつ現れる時期であるため、悪因子を早期に発見することで、将来的なリスクを軽減する事につながります。

この時期に対処を怠ることは、将来的に歯を失う可能性が高まります。

50歳~65歳

生涯において、入れ歯になるか、ならないか、歯で困るか、困らないかが更にわかる時期といえます。きちんと管理をしてきた人としなかった人の差がはっきりしてきます。過去に受けてきた歯科治療の結果が表れてきます。つまり各個人の口腔内環境の管理結果が出る時期と言えるでしょう。また全身的なお病気や常用薬による口腔内の環境変化にも注意が必要になる時期でもあります。

この時点で特に問題がなければ、将来的にそれほど心配することはありません。(定期的管理は必要です。)しかしもし、この時期に問題がある場合は、入れ歯やインプラント、ブリッジなどを含めた複雑な治療が必要になってきます。

その場合は、問題点を根本から見直し、対症療法のみではなく、計画性を持った包括的療法を行なうことを勧めます。

65歳以上

個人差にもよりますが、体力的、年齢的にも、長期的かつ複雑な歯科治療は身体にも負担をかけていくことになります。老後に備えて、口腔内の健康管理をしっかり行なうためにも、かかりつけの歯科医院とよく相談されることをお勧めします。

また他の疾患がある場合は医師との連携を考えなければなりません。全身の健康管理を含めた考え方が必要になります。基本的に年齢を重ねれば重ねるほど、長期的かつ複雑な治療は困難になるので、できるだけ早期の治療、早期の予防管理を心がけてください。

また、計画性のある治療、包括的治療を行なうことは、後々の負担を減らすことにつながります。一生涯、自分の歯が健康であるためにも、早期発見、早期治療、予防管理を大切にしてください。

神経が残っている歯は、適切に管理されることでいつまでも使用することが可能です。加齢と共に抜け落ちるものではありません。そして義歯は消耗品です、数年置きに作り替えが必要です。残っている歯で噛めるからと、義歯を使わずに放置してしまうと、ゆっくりと噛み合わせが崩壊してしまい治療は非常に難しくなります。

まずこのことをしっかりと認識していただきたいと思います。 各個人、年齢、環境によって口腔内のコンディションは変化します。その変化を読み取りながら、歯科医師が適切な口腔内環境を提供し、患者側が維持継続していくための習慣を順守していただくことで、いつまでも健康な口腔機能を獲得できるのです。